
ございませんでしょうけれども、例えば民間のそういう代理店、あるいは演劇制作者が持ち込んでくるものに関しては、いろいろばらつきもあろうかと思いますから、やはりシミュレーションをして、自分が一からお金を積み上げていったらこの芝居、このカンパニーはいくらでできるだろうかというようなことは、常にアートマネージメントを志される場合、必要なことじゃないかと思います。それにもそういう人脈、情報、そういうものの収集が非常に大事ではなかろうかと思いますし、また観客の反応を知るということも大変プロデューサーとしては大事でございますので、私なんか劇場の椅子に座るというのは非常に好きな人ですから、つまらない芝居だろうなと思っても非常に切符がソールドアウトしているという場合、何が客に受けているんだろうか、暇があれば、そういうふうな好奇心で参ることがございます。もちろん、観客の反応を見たりして、あっ、こういうところで観客が受けているんだと思って感心するわけです。 アメリカなどはトライアウトという方針がまずありまして、ニューヨークで上演をする前に、ボストンだとかフィラデルフィアだとか、あるいはもっと小さい町だとかで観客の反応を見ながらつくっていく。それで初めてブロードウエーへ乗り込む、こういう仕事があります。もちろん、外国の場合は無期限ロングランというのが当たり前の世界でございますので、日本のように1ヵ月あるいは1年、「四季」は1年ということをやっておりますけれども、あるいは2年ということをやっていますけれども、売れなくても売れても1カ月、閑古鳥が鳴いてもとりあえず1か月はやるというのが今の商業劇場のやり方です。 初日が1日で千秋楽が30日だと決めれば、がらがらであろうが何であろうが、とりあえず途中でぶった切る、初日でクローズするというような欧米のやり方はまずありません。もちろん、保険の問題とかいろいろ複雑な状況も絡んでいるようですけれども、1回でクローズした、あるいは初日をあける前のプレビューでもう見切りをつけたみたいな、何百万ドルを投じながらそういうものがあった。ハロルド・プリンスも「人形の家」の後日談をミュージカルにした「ドールズ・ライフ」というのが、たしか1回か2回でクローズして、何百万ドルをどぶに捨てたみたいな例があるわけですけれども、そういうことは残念ながら日本の場合はございません。 ただ、遅々として数字が上がらない時などは、プロデューサーは営業の責任はないといえばないわけで、実際にチケットセールスは営業部がやるわけですから、プロデューサーが一々切符を売るということはございませんけれども、毎日の日報を見ながら、よく胃潰瘍にならないなというようなケースもございます。ですから、アートマネージメントのプ
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